果てなく続く試行錯誤の過程
難しいご依頼を何とか終わらせることができました。
角度のある形状での結晶の安定化は、ここ数年間解決できない課題でした。
成功率は低いですが、マグカップ数個程度なら作れるかな、といった状態。
しかし、求められる数が100…200…となってくると、その難易度はもう別次元。
通常は大量に作る方がコスト減と生産効率向上になるのですが、結晶は全く逆です。
完成までにどれだけの失敗作を生み出し壊すことになるのか、そもそも間に合うのか。
調合を変え、掛け方を変え、焼成方法を変え、ひたすら解決策を模索する日々が続きました。
辿り着いた答えは、自分の「器とはこうあるべき」という考えを否定することでした。
作り手は、技術や哲学を学んでいく過程で、自分なりの正解を作り上げていくものです。
その正解へのこだわりが、結晶分野にとっては障害となっていることに気づきました。
両立できるのであれば、それに越したことはありません。
しかし、現状ではどちらか一方しか選ぶことができない。
悩んでいる時間はありませんでした。
今思えば、私のこだわりは独りよがりの執着でしかなかったのかもしれません。
何かを捨てることで、作品が進化したり、お客様が求めるモノを作れるのなら。
積み上げてきた自分の物差しも変えていかなければならない。
その必要性を実感させられました。
結果的に何とか完成させることができましたが、根本的な解決には至っていません。
改善はしましたが、それでも長い制作時間と大量の焼成回数が必要でした。
また、新たに出てきた課題もあったりして、三歩進んで二歩下がった感じです。
それでも、久しぶりに前進できたと実感できる結果を出せたのは嬉しい限りです。